野球の指標の1つ「DIPS」をご存知ですか?
DIPSとは「Defense Independent Pitching Statistics」の略で投手の能力を
- 被本塁打
- 与四死球
- 奪三振
の3つだけで評価しよう!という指標です。
DIPSのコンセプトは、投手の成績を「投手自身でコントロールできる部門」と「投手自身ではコントロールできない部門」に分けて、「投手自身でコントロールできる部門」だけで投手を評価することである。
「投手のインプレイ打率(BABIP)はシーズンごとの一貫性がない」という事実の発見から、失点の増減には野手の守備と運の要素が大きくかかわると考えた。
そこでインプレイの要素を最初から無視し、投手のみに責任がある要素である奪三振、与四球、被本塁打から投手を評価しようとする考え方がDIPSである。
この説明を見ると投手の個人能力を測る上で非常に納得がいきますが、「わずか3つの成績で投手の能力を評価するのは無茶苦茶じゃないか」という意見もあります。
そこでDIPSのコンセプトをそのままにより詳細な数値を出せるのが「FIP」という指標です。
目次
FIPは防御率との相関性が高い指標である
FIP(Fielding Independent Pitching)は以下の成績を計算して算出します
- 被本塁打
- 四死球
- 奪三振
- 投球回
- 防御率
これにリーグ平均などを考慮した補正値を加えたものが「FIP」となります。
リーグ平均による補正を加える必要があるので、個人で算出するのは少し難しいですね。
日本では合同会社デルタが無料でFIPを含むデータを公開しています。
防御率は運によってバラつきのある指標ですが、FIPは運の要素を取り払っているので、より実力に近い数値が出ます。
そのため「FIPは翌年の防御率を予想するための参考になる」と言われています。
では、実際にFIPを見てみましょう。
FIPを見れば翌年の防御率が分かる?
FIPと防御率に大きな差が開いた場合、防御率が運の要素で大きく変動していると考えるべきです。
そのため、翌年の成績を予想したときには防御率ではなくFIPの方がより現実的です。
実際の例を見ていきましょう。
Case1 広島カープ・ジョンソン投手は復活できるのか
広島東洋カープのジョンソン投手は2015年に防御率1.85、翌2016年には防御率2.15を記録した好投手です。
しかし、2017年は故障も影響したのか防御率4.01と大きく成績を落としてしまいました。
はたして、FIPを見ればこの成績の下降を予測できたのでしょうか?
年度 | FIP | 防御率 |
2015年 | 2.99 | 1.85 |
2016年 | 3.34 | 2.15 |
2017年 | 3.47 | 4.01 |
このように、ジョンソン投手のFIPは年々悪化しています。
2017年に関しては実力に対して防御率が悪すぎるとも言えますが、最初の2年は「出来過ぎ」だったのかもしれません。
来年、もし万全の状態でフルシーズンを戦い抜いたとしても防御率は3点台になるのではないかと予想できます。
答え合わせ
年度 | FIP | 防御率 |
2018年 | 3.38 | 3.11 |
予想通り、防御率3点台でシーズンを終えました。
FIPは非常に安定しており、他の成績も良いので2019年も同等の成績を残すのではないでしょうか?
Case2 横浜DeNA・今永昇太投手は2018年も好成績を残せるか
続いて、2017年は横浜DeNAの先発投手陣の中では軸として活躍した今永投手を見てみます。
2年連続で防御率2点台を記録した今永投手ですが、今の投球では2018年も同じような活躍をするのは難しいかもしれません。
今永投手の防御率とFIPを見てみましょう。
年度 | FIP | 防御率 |
2016年 | 3.51 | 2.93 |
2017年 | 3.71 | 2.98 |
今永投手は2016年からFIPが高く、2017年の活躍も正直「想定外」でした。
しかし、2017年の成績を見てもFIPは更に悪化しており、来年は苦しいシーズンを過ごす可能性が高いと言えます。
防御率3点台後半…まではいかないと思いますが、2点台をキープするにはさらなる進化が求められそうです。
答え合わせ
年度 | FIP | 防御率 |
2018年 | 5.27 | 6.80 |
あまりにも極端ですが、予想通り成績が悪化してしまいましたね。
FIPを覆す選手の進化。予想はあまりアテにならない。
FIPは防御率よりも投手個人の能力を測りやすい指標ではあるのですが、翌年の成績予想に使うには私個人の感想として、微妙です。
選手は日々努力をしており、シーズンごとにパフォーマンスはかなり変わります。
数ある指標の中でもFIPに関しては賛否両論あり、多くの派生した指標が生まれています。
あくまで「参考」程度にとどめておくべきではないかと思います。
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