日本で最もポピュラーな打者を評価するための指標はなんでしょうか?
恐らく「打率」という答えになるのではないでしょうか。
しかし、セイバーメトリクスと呼ばれる統計学が野球チームの戦術・編成に活用されるようになって様々な指標が使われるようになってきました。
OPS(On-base plus slugging)はそんな打撃指標の中で非常に単純かつ得点との相関性が高い優秀な指標です。
Yahooの選手データにも採用されるなど、日本でも「当たり前」になりつつあるOPSを実際の数字を見ながら解説していきます。
目次
OPSの算出方法は単純。誰でも計算できます
まず、OPSはどのように算出されているかをおさらいしましょう。
出塁率+長打率=OPS
このように、出塁率と長打率を足した数値がOPSとなります。
出塁率は安打数に四死球・犠牲フライを加えて打数で割った値を計算したもので、「最高出塁率」というタイトルがあるように重要な指標です。
一方で長打率はあまり馴染みがないかもしれません。長打率は塁打数を打数で割ったものが長打率となるのですが、
安打 | 塁打数 |
単打 | 1 |
二塁打 | 2 |
三塁打 | 3 |
本塁打 | 4 |
このように、安打の種類によって一本あたりの「塁打」は違います。単純に安打を10本打った選手と二塁打を5本打った選手の塁打数は同じです。
安打の数ではなく、長打を多く打った選手のほうが優秀な数値が出るという、まさに「長打率」ですね。
この二つの数値を合わせた物が「OPS」となります。
得点係数は驚きの0.941
「得点係数」と呼ばれる「指標がどれくらい得点に関係するか?」という数値は「0.941」となっています。
これは1に近づくほど得点との相関性が高い、つまりOPSが高ければより得点につながるということです。
「打率」の場合はこの得点係数が「0.776」ですから、OPSがより得点につながりやすい優秀な指標だということが分かります。
OPSの欠点は?万能な指標だが、打順の参考にする際は注意が必要
OPSはその性質上、長打力がより重要になります。
つまり、出塁率が高い選手より長打率が高い選手のほうが数値がよくなる傾向になっているのです。
得点係数を考えればこれは正しい数値なのですが、いくらホームランを打とうがランナーが居なければ1点しか入りません。
そういう意味で言えば、打線全体を見たときにOPSだけを見て打順を組むのは危険と言えます。
実際にOPSの記録を見てみよう。選手の打撃評価に使えるのか?
OPSの開発者であるビル・ジェームズは、OPSの数値で選手を下記のように評価できるとしています。
ランク | 評価 | OPS |
---|---|---|
A | 素晴らしい | .9000以上 |
B | 非常に良い | .8334 – .8999 |
C | 良い | .7667 – .8333 |
D | 並 | .7000 – .7666 |
E | 平均以下 | .6334 – .6999 |
F | 悪い | .5667 – .6333 |
G | 非常に悪い | .5666以下 |
次に、日本プロ野球におけるリーグ平均OPSは下記の通りです。
年度 | セリーグ | パリーグ |
2012年 | .648 | .658 |
2013年 | .699 | .708 |
2014年 | .720 | .707 |
2015年 | .672 | .703 |
2016年 | .698 | .706 |
2017年 | .696 | .708 |
セパ両リーグ「違反球」と呼ばれた飛ばないボールが使用された2012年は大きく数値を落としていますね。
基本的にDH制度のあるパリーグのほうが数値は高くなります。この数値を見れば、やはり「.700が平均値」であることは納得ですね。
日本プロ野球で最もOPSが高かったのはあの選手
では、日本のプロ野球歴代記録を見たときに最も優秀な数値を記録したのは誰でしょうか?
通算・シーズン記録ともに王貞治選手です。
通算OPS「1.104」、1974年にはOPS「1.293」を記録しています。驚異的ですね。
ちなみに、2013年に60本塁打を記録した際のヤクルト・バレンティン選手はOPS「1.234」でした。
元阪神・マートン選手と元中日・ブランコ選手を比較。同じ時期に活躍した2選手のOPSはどうなっている?
それでは、実際に同じ時期に同じセリーグで活躍した外国人選手を比較してみたいと思います。
元阪神のマートン選手、そして元中日→横浜のブランコ選手です。
年度 | マートン 打率/OPS | ブランコ 打率/OPS |
2010年 | .349/.894 | .264/.850 |
2011年 | .311/.762 | .248/.802 |
2012年 | .260/.632 | .248/.851 |
2013年 | .314/.845 | .333/1.049 |
2014年 | .338/.872 | .283/.822 |
このように左側の数値、打率だけを見ればマートン選手が圧勝です。
しかし、OPSを見ればブランコ選手のほうがマートン選手を上回ることが多い結果になりました。
この数値を見れば単純計算でチームにより多くの得点をもたらしたのはブランコ選手です。
もちろん、守備や走塁技術などは反映されませんし、チームに長打力のある選手が揃っているならより多い出塁が望めるマートン選手のほうがマッチしていると言えます。
ただ、選手個人の打撃だけを見ればブランコ選手の方が優秀であるということが分かります。
まとめ|OPSで分かる選手の特性。最も安定しているのは高い出塁率の選手
選手にはいつか衰えが来ます。特に、長打を放つ力が最も衰えやすいと言えます。
そういった意味で言えば、最も安定して高いOPSを維持できるのは出塁率の高い選手であり、メジャーの長期契約では単純なOPSより出塁率が重視されるそうです。
安定して出塁率が高く、長打を打つことができる選手
これがOPSという指標上、最も価値の高い選手であると言えます。
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